ユースケース

気候変動の物理的リスク:ESGとTCFD開示への理解

気候変動の物理的リスクに関する評価と情報開示は、あらゆる規模の企業にとって重要性が増しており、その動向は絶えず変化しています。One Concernは、ダウンタイムやキャッシュフローの悪化など、直接的・間接的な損害を測定するために必要なインサイトを提供します。


Conventionally

現在、多くの企業が自主的にESG目標に関する進捗を開示していますが、気候変動の物理的リスクの定量化については義務とはされていません。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言(以下TCFDフレームワーク)をもとに現在各国において検討が進められている開示基準が導入されれば、気候関連の財務報告において、より透明性の高い情報開示が企業に求められるようになります。近年では、米国証券取引委員会(SEC)や日本取引所グループ(JPX)、欧州委員会、基準設定機関などによって、金融システムにおいて気候関連の脆弱性に関する透明性を確保するための規則が施行、推進、検討されています。

気候変動の物理的リスクの開示に関する世界の動向

米国では、以下の情報開示を企業に求める規則案が規制機関によって検討されています。

1. 気候関連リスクを特定、評価、管理するためのプロセス
2. 事業のレジリエンスや気候関連リスクの評価のためのシナリオ分析、シナリオの内容、前提条件、予想される財務影響
3. 金額が大きい場合は、深刻な気象現象が財務諸表項目に及ぼす影響(減損費用や損失引当金の増加など)。「大きい」とは、当該費用が関連科目の1%を超える場合を指す
4. 深刻な気象現象のリスク緩和にかかる費用や資産計上額(関連科目の1%を超える金額の場合)

日本では日本取引所グループ(JPX)が、東京証券取引所のプライム市場上場企業に対し自主的な開示を推奨しています。2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂によって、TCFDフレームワーク、あるいは同等の枠組みに沿った情報開示が企業に求められるようになりました。また金融庁の金融審議会でも、気候変動関連の情報開示に関する要求事項の検討が行われ、早くて2023年度から、TCFDに沿った情報開示が上場企業に義務付けられることになっています。

欧州では、物理的リスクの財務影響や気候変動の緩和と適応に向けた目標の開示を企業に求める指令案が欧州委員会によって発表されました。また欧州連合では欧州サステナビリティ報告基準の草案も発表され、気候変動の物理的リスクの財務影響や気候変動の緩和と適応に向けた目標の開示を企業に求めています。さらに、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)や欧州財務報告諮問グループの基準案では、財務影響のほか、気候災害の特定、気候変動の物理的リスク、事業運営やバリューチェーンへの影響の報告について、より詳細な開示事項を定めています。


Challenge

深刻な気象現象による財務パフォーマンスの低下やコストの増加を把握するため、企業は、知見や精選されたデータ、ソフトウェアを必要としています。例えば、気候関連リスクがインフラに及ぼす経済的影響や事業運営への影響は、企業や規制機関にとって何よりも懸念される問題となっています。CDPの「グローバルサプライチェーンレポート」によると、2020年に気候変動によってサプライヤーが負担したコストは1.21兆ドルに及んだ可能性があると報告されています。

また米国では、洪水による年間の経済損失は平均190億ドルに上り、そのうちの74%は無保険損害によるものです。学術誌「Nature Climate Change」に掲載された論文によると、気候変動の深刻化によって、米国における洪水による損失額は、RCP 4.5シナリオの場合、2050年までに26%増大すると予測されています。
企業は、気象や気候変動が拠点や設備、事業運営にもたらす直接的・間接的な影響を見直し、マテリアリティを特定しなければなりません。現在コンサルティング企業が提供するESG情報開示サービスには、事業運営にかかわるインフラリスクの依存レベルに関する分析が欠けており、大まかな定性分析を行うことしかできません。自社の気候関連リスクや財務影響について明確な情報開示を行うのであれば、企業は以下を検討する必要があります。

1. 気候変動の物理的リスクを評価するための枠組みを構築、または既存の枠組みの強化
2. 定性的・定量的なマテリアリティに取り組むため、気候モデルを導入
3. 社内の膨大なデータセットを処理するため、アナリティクスや人工知能(AI)、機械学習(ML)の活用

One Concernは、気候変動の物理的リスクに関する報告を定性的なアプローチから定量分析に変革させるためのコスト効率の高いソリューションを提供します。


Solution

各社の依頼に個別に対応するコンサルティング企業の手法は、膨大な時間のかかる定性的なプロセスに依存しています。一方、One Concernは、気候リスクを開示するために必要なインサイトを即時に提供します。また、コンサルティング企業の料金に比べて、わずかなコストで、より正確で再現性があり行動に移しやすい指標を提供します。そのため企業は、高額な外部の専門家に頼ることなく、自社内で結果を導き出すことができます。

One Concernは、One Concern Domino™とOne Concern DNA™の2つの製品を提供しています。これらの製品は、以下に関する情報開示規制への対応をサポートします。

1. 気候変動の物理的リスクによる重大な影響により、事業や連結財務諸表にもたらす影響
2. 気候関連リスクによって想定される企業の事業モデルやアウトルックにもたらす影響
3. 気候シナリオ分析および気候ストレステスト
4. 異常気象や気候変動が、連結財務諸表の各項目に及ぼす財務影響

One Concernの製品は、様々な危険や気候シナリオに対して、再現期間や計画期間、リスクしきい値を調整しながら、アセット別のダウンタイムを予測することができます。そこから、直接的・間接的な損害をもとに、キャッシュフローの悪化を予測することができます。キャッシュフローの悪化は、One Concern Downtime Statistic™(1CDS™)を用いて計算されます。1CDS™は、各事業用拠点において通常の事業運営が行えなくなる時間を見積もります。また、依存関係にあるライフラインのネットワーク(電力、輸送、地域社会など)の損傷による間接的な損害を計算することもできます。この統計機能をカスタム分析と組み合わせることで、事業運営のダウンタイムに伴う自社の財務損失を見積もることができます。

気候変動の物理的リスクや気候関連の依存リスクによって生じるダウンタイムの影響を定量化することで、自社の事業運営におけるキャッシュフローの悪化を予測し、より正確なリスク開示に繋げることができます。

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